5ちゃんねるを眺めていると、ときどき信じられないような書き込みに出会います。今回取り上げたいのは、ある投稿の内容です。
「給付金や減税でやる場合は、それと同じ金額またはそれ以上の増税をするしかないからな。金額の大きい所得税、法人税、消費税あたりを増税するしかない。シンプルな話、それら平均で1人あたり100万円の増税をして、一律で1人100万円給付する。120兆円増税して120兆円給付、でもそんなこと金持ちや大企業が許すわけがない。つまり物価高は止まらないってこと。」
この書き込みを見たとき、正直言って目を疑いました。妄想レベルの財政論で、中世日本からタイムスリップしてきたかのようです。現代の国家財政の基本すら理解していない典型的な例です。
「給付金=同額増税」という前提の誤り
まず、この人の前提である「給付金や減税を行う場合、必ず同額以上の増税が必要」という部分からして大間違いです。現代国家は通貨発行権を持つ主体であり、財源確保の方法は税金だけではありません。国債の発行や中央銀行の金融政策もあります。
つまり、国家は家計とは違い、「収入が増えないと支出できない」という単純なルールに縛られていません。それを無視して「給付金=増税」という公式を平然と書き込むのは、経済学の初歩的知識を完全に欠落させた主張です。
「1人100万円増税して100万円給付」というゼロサム幻想
さらに、投稿者は「平均して一人100万円の増税をして、一律で100万円給付すればよい」と続けます。これは完全にゼロサム幻想です。政府支出と国民の所得は、単純に足し算・引き算でバランスするものではありません。
現代経済では、政府支出が消費や投資を押し上げることで乗数効果が生まれ、経済規模を拡大します。給付金の財源が増税でまかなわれるかどうかだけに目を向け、経済全体の動きを無視するのは、まさに「中世農民の家計感覚」で国家財政を考えているのと同じレベルです。
「金持ちや大企業が許さない=物価高が止まらない」は完全な因果破綻
投稿者はさらに、「金持ちや大企業が許さないので物価高は止まらない」と結論づけます。しかし、物価は単純に個人や企業の機嫌で決まるわけではありません。物価変動には、需要と供給、賃金動向、国際商品市況、金利や通貨供給量、期待インフレ率など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
「金持ちが許さないからインフレが続く」などという考え方は、もはや占いレベルです。現代経済学の知識を完全に無視した主張と言えます。
ネット上で広まる誤解の背景
こうした妄想レベルの国家財政論がネットで広まる理由には、次のような要因があります。
- 税金=悪、給付=善 という短絡的思考
- 「国の財源」「借金」という言葉に過剰反応する感情的判断
- 金利差やマネーストックなど為替・財政の本質的知識を理解していない
- 経済学の基礎知識が欠如している
これらが組み合わさると、感覚だけで「給付金=増税=物価高」といった間違った因果関係を作り上げてしまうのです。
結論
今回取り上げた5ちゃんねるの書き込みは、国家財政の現実をまったく理解していない妄想論です。現代国家は通貨発行権を持ち、政府支出は単なる増税で賄わなくても運営できます。給付金や減税は経済を刺激する手段であり、その効果は単純なゼロサム計算で語れるものではありません。物価も個人や企業の“機嫌”で決まるものではなく、複数の経済指標と市場期待によって形成されます。
ネット上の感覚論や思い込みに惑わされず、データと論理に基づいて経済や財政を理解する姿勢が、情報過多の現代では不可欠です。

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