国債は借金か資産か?―上野千鶴子氏の発言から考える日本の財政とMMT

公開日:2025年12月9日

上野千鶴子さんのX(旧Twitter)投稿より
「国債は借金ではなく資産だと? えせ経済学であるMMT理論に洗脳されている人たちがこんなにいるとはオドロキ。まともな経済学者に聞いてみるといい。」

(Xにて 2025年12月3日23時57分 投稿とされる内容)

この強い言葉の発言をきっかけに、私は「国債とは何か」「MMTは本当に“えせ経済学”なのか」を改めて考え直す必要を感じた。本記事ではこの問いを出発点に、できるだけわかりやすく日本の財政議論の本質を整理する。

目次

日本の財政議論はなぜ極端化するのか?

近年、財政に関する議論は両極端へ振れがちだ。代表的なフレーズとしては、

  • 「国の借金が1000兆円!破綻だ!」
  • 「国債は無限に発行できる!」

どちらの主張も重要な前提を置き忘れている。極端な主張ほど「前提の欠落」があり、これが政策論議を混乱させる最大の原因だ。

国債は本当に「未来へのツケ」か?

多くは国家財政を家計に例えるが、国家は自国通貨を発行できる点で家計と根本的に違う。特に日本の場合、次の点が重要だ:

  • 国債はほぼ全て円建てである
  • 日本銀行が最後の買い手になりうる
  • 金利は長期的に低水準で推移している

こうした構造を踏まえると、単純に「借金が多い=破綻する」と結論づけるのは誤りである。過度な財政引き締めが景気を悪化させ、税収を減らすという悪循環を招く可能性がある。

MMTは「無限出費OK」の危険理論なのか?

現代貨幣理論(MMT)はしばしば誤解される。MMTの核心は次のとおりだ:

  • 自国通貨建て国債は財政の直接的制約とはならない
  • 財政の真の制約はインフレである
  • 税金は通貨の信認とインフレ調整のための手段である

すなわちMMTは「税金は不要」「国債は無制限で良い」と主張しているわけではない。むしろ、需要過多でインフレが進む局面では増税や支出削減といった“ブレーキ”が必要だと説く理論である。

経済政策は宗教でも感情論でもない

財政黒字そのものを目的化するのは誤りだ。国家の目的は国民の厚生を最大化することであり、収支黒字は手段に過ぎない。

  • 教育や研究投資が削られる
  • 若年層の賃金・雇用環境が悪化する
  • 長期的には税収自体が低下する

重要なのは「どの時点で何をするか」をデータと目的に基づいて判断することだ。

財政判断の指標は「借金」ではなく「物価」

議論の焦点注意して見るべき指標
国の借金が増えているインフレ率・経済成長率
国債発行が多い国債金利の安定性・市場の信認
将来世代にツケを回す現在の成長力と投資水準

短く言えば、財政規律を語るなら「数字」より「経済の現状」を見るべきだ。

必要なのは「極論」ではなく「計量と検証」

日本ではしばしば財政議論が善悪の道徳論にすり替わる。だが経済政策は宗教ではない。

  • 利用可能なデータ
  • 理論
  • 国際比較

こうした材料を用い、目的に照らして最適な策を検討するべきだ。

結論:前提条件を無視した議論こそ「えせ経済学」だ

  • 国債は、それ自体が即「破綻の符号」ではない
  • 財政の制約はインフレである
  • 緊縮一辺倒が常に正しいわけではない
  • 議論は極論でなく前提から始めるべきである

よくある反論と、その答え

反論①:国の借金が増えすぎると返せなくなって破綻する!

答え:自国通貨建て国債で返済不能型の破綻は起きにくい構造です。

反論②:国債を刷り続けたらハイパーインフレになる!

答え:インフレは需要過多で起こる。現状の日本は需要不足です。

反論③:国の借金が増えると子どもがツケを払う!

答え:成長投資を怠るほうが将来世代に重いツケになります。

反論④:国債依存は民間投資を妨げる!

答え:需要不足時の財政支出はむしろ民間投資を促すことがあります。

反論⑤:国債増発は信用低下につながる!

答え:信用は借金の多さではなく、経済の強さ(税収力・生産性)で決まります。

※実際の政策は最新データと状況を考慮する必要があります。

まとめと次の一手

  1. 前提条件を明確にする
  2. 指標(物価・金利)を監視する
  3. 目的(厚生)に沿って判断する

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