なぜ優秀な人材はマス・メディアに集まらないのか

成績上位の「上澄み層」は、暗記だけではない思考力や価値創造力を持っています。では、なぜそうした人々は大手メディアへの就職を避けるのか。組織構造・文化・報酬以外の「職場としての魅力欠如」を考えます。

目次

上澄み層が求める職場の条件

成績優秀者は単なる記憶力よりも、分析力・批判的思考・問題解決力を重視します。自ら仮説を立て、検証し、価値を生み出せる仕事に魅力を感じます。与えられた材料をただ再編集するだけの業務では、能力を活かせない――それがまず第一の理由です。

「カンペ依存」の仕事環境

多くの大手報道現場では、官庁・企業が作成したプレスリリースや要旨(通称「カンペ」)を基に記事が作られます。一次資料の深掘りや独立した検証より、速さと「形式的に整った原稿」の方が優先される文化が存在します。上澄み層にとっては、思考・取材・検証の余地が極端に少ない職場は魅力的ではありません。

優秀な学生は「自分の頭で考えて成果を出す」ことを望みます。カンペに沿って事務的に記事を書く仕事は、その望みを満たさないのです。

利権と安定が奪う成長機会

新聞の軽減税率、格安な電波利用料など、報道機関は国家や制度から経済的な優遇を受けています。こうした「安定」は短期的には魅力に映るかもしれませんが、挑戦や成果に対する報酬・評価が薄くなりやすいという副作用があります。優秀層は成長や影響力を求めるため、安定だけでは惹かれません。

尊敬できる先輩の不在

上澄み層が職場を選ぶ際、先輩やロールモデルの存在は重要です。ところが現場の上層にいる人々が「カンペ依存」「事務処理型」の姿勢を示すと、若手は将来像を描けず、尊敬が生まれません。「こんな先輩にはなりたくない」と感じれば、同業を避けるのは自然です。

ポイント:優秀な人材は単に高給を求めるのではなく、「どこで何を学べるか」「誰と仕事をするか」を重視します。報道現場がそれを提示できなければ応募は集まりません。

社会的評価の逆効果

近年、「マスゴミ」といった蔑称が広がり、報道機関への信頼が揺らいでいます。就職先としてのブランド価値が下がれば、優秀層は社会的評価や自己肯定感の観点からその職を選びません。働く意義が見えない職場には、人は集まりにくいのです。

教育と職務のミスマッチ

受験中心・暗記型の教育を経た学生が多い一方で、上位層は思考訓練を積んでいます。しかし、メディア現場の仕事は「一次資料をじっくり検証する責任」よりもスピードと編集的な判断が優先されがちです。このミスマッチは、優秀層の志向と業務内容の乖離を生みます。

組織が作る「負の循環」

  1. 優秀層が応募を避ける
  2. 残った人材で回す運用が固定化する
  3. 組織のクリエイティビティや信頼が低下する
  4. さらに優秀層が離れる、という悪循環

この循環は個別の採用施策だけでは止められません。組織文化・業務設計・評価制度の包括的な改革が必要です。

ではどうすれば変わるか(国民・現場・教育の視点)

短期的には期待しにくいものの、可能な改善策は存在します。

  • 報道現場:一次資料の深掘りを評価する社内制度(調査リポート手当・長期取材評価)を導入する。
  • 採用:インターンやプロジェクト型採用で「思考力」を見極め、若手が実務で挑戦できる場を作る。
  • 市民:情報リテラシーを高め、良質な報道を支持する消費行動(課金・拡散)を増やす。
  • 教育:批判的思考や一次資料の読み方を早期から教えるカリキュラム強化。

変化は一朝一夕には来ませんが、組織内外で「価値ある仕事を正当に評価する」文化が育てば、優秀層は再びメディアの門を叩くようになります。

結び:読者への問い

高給だけでは人は集まりません。あなたが「良い報道」を求めるなら、単に批判するだけでなく、質の高い取材・検証に資金や注目を送ることが重要です。メディアを変える力は、実は消費者/市民側にもあります。

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