早稲田大学名誉教授の池田清彦氏が2025年12月8日にX(旧Twitter)で投稿した内容が、大きな波紋を呼んでいる。 特に台湾有事を巡る認識と、日本の国防政策への姿勢について、現実から乖離した極めて危うい言説が展開されている点が問題だ。
国民を「アホ」呼ばわり ― 学者としての姿勢が問われる
池田氏は12月8日午前0時43分、次のように投稿した。
「高市の支持率が高いのは、データを操作しているのか、支持している日本人がアホなのか。この先、生活が苦しくなっても、欲しがりません勝つまでは、と言って頑張るつもりかしら。最初から勝てないの自明なのだけれども、クラッシュするまで頑張るのかな。」(2025年12月8日 0:43)
政治家の政策批判は自由である。しかし政策を支持する国民に対し「アホ」という侮蔑表現を使うのは、学者としての品位を疑われても仕方がない。
台湾有事は「まず起こり得ない」?― 現実との乖離
同日午後12時53分には、台湾有事について次の投稿を行った。
「中国が台湾を武力統一することは、現状ではリスクが大きすぎて、まず起こり得ないと思います。…戦争の危機を煽ることによって政権の求心力を高めると同時に、政権に連なる軍需産業の儲けを追求しようというわけです。」(2025年12月8日 12:53)
ここには二つの深刻な問題がある。
- 中国が台湾に武力行使をする可能性をゼロに近いと断定している
- 国防強化の議論を「軍需産業の陰謀」と矮小化している
この二点は、現在の国際情勢を分析すれば到底導かれない結論である。
戦後、最も成功した領土拡張国家が中国であるという事実
池田氏は「中国は台湾に武力侵攻しない」と主張する。しかし、歴史を見れば中国が武力による既成事実化を繰り返してきたのは明らかだ。
- 1950年:チベット武力併合
- 内モンゴル:大規模な漢族移住と文化抑圧
- 新疆ウイグル:監視社会・収容所・強制同化
- インド国境:武力衝突と実効支配地域の拡大
- ブータン:越境侵入し“村”を建設して占領
- 南シナ海:人工島建設→軍事要塞化
中国は戦後世界で最も領土を広げた国家である。 その中国を前に「台湾だけ例外」と信じるのは、根拠なき楽観でしかない。
香港の破壊が「台湾平和統一の可能性」を完全に消した
池田氏は「中国に武力統一のメリットはない」と述べるが、香港の一国二制度の崩壊によって台湾国民は決定的な事実を理解した。
- 約束は守られない
- 民主主義は破壊される
- 言論の自由は消滅する
この結果、台湾の親中派は急速に衰退し、圧倒的多数が統一反対に転じた。中国にとって平和統一の可能性は完全に失われたのである。
拒否 → 武力行使 これは中国の歴史的パターンだ。台湾だけ例外扱いする根拠はどこにもない。
遼寧空母の喜界島沖通過 ― これは「沖縄包囲」の軍事サイン
2025年、中国海軍の空母遼寧が喜界島沖を北上した。これは単なる航行ではない。
- 台湾有事時、日本は巻き込まれる
- 中国は第一列島線突破を試みている
- 沖縄を完全に射程に入れている
中国軍の軍事文書には“沖縄包囲”という表現が存在し、南西諸島の重要性は極めて高い。 つまり日本はすでに中国の軍事行動の中心に位置している。
日本が軍備増強せざるを得ない理由
日本は軍備を増やしたいのではない。 「増やさなければ国が守れない」状況に追い込まれている。
- 中国は侵略国家である
- 台湾有事=日本有事である
- 沖縄・南西諸島は最前線になる
- 中国軍機・艦艇は日本の周辺で活動中
これらは思想ではなく事実である。
池田氏の認識が危険な理由
池田氏の主張をまとめると、
- 中国は侵略しない
- 台湾有事は起きない
- 国防議論は軍需産業の陰謀
- 高市支持者はアホ
という構図になる。
だがこれは、
- 歴史の無視
- 現実の無視
- 地政学の無視
- 香港を無視
- 中国軍の行動を無視
といった、極めて危険な楽観主義である。
国防議論を「陰謀」扱いする言説は、国民を危機から遠ざけるどころか、無防備にし、最終的には中国にとって最も好都合となる。
結論:台湾有事は“起きない”ではなく“起こすために準備されている”
中国は戦後最大の領土拡張国家であり、台湾だけ例外扱いする根拠は存在しない。
平和統一が不可能になった今、中国の選択肢は狭まっている。 日本は理想論ではなく、現実に基づいて国防を考える段階に突入した。
池田清彦氏の「台湾有事否定論」は、現実から乖離した危険な楽観であり、国民の安全保障意識を鈍らせる点で極めて問題が大きい。 地政学、歴史、中国軍の行動を踏まえるなら、台湾有事を「起きない」と断定することこそ、最も非科学的な態度だといえる。

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